初版です(2026-08-11)。実務に沿っているか、まだ十分な確かめを経ていません。合わないところ・足りないところがあれば、お問い合わせからお知らせください。いただいたご意見を反映して改訂していきます。

支援者のための記録ガイド
聞いたことを、活かし続けるために

計画相談支援の担当者・意思決定支援に関わる方向け

このガイドは、聞き方の手引きではありません。

初回のアセスメントで、みなさんはすでに時間をかけて丁寧に聞き取っておられます。フェイスシートには、禁忌事項も、生活の様子も、支えている人たちのことも、詳しくまとまっているはずです。そこに私たちが口を出すことはありません。

このガイドが扱うのは、その先の2つだけです。

ひとつめ

作った資料を、どう渡すか

転記も要約も要りません。受付箱に入れていただければ、こちらで交通整理します。

ふたつめ

その情報を、どう古びさせないか

フェイスシートは作った日の姿で止まります。半年後・一年後に何が変わったかを追い続ける——様式だけでは埋まらないところです。

1初回 —— 作った資料を、受付箱に入れる

渡し方 —— デスクトップの「受付箱」に入れるだけ

導入のときに、デスクトップに「受付箱」というフォルダが1つできます。渡していただく資料は、そこに入れるだけです。ファイル名も、入れる順番も、気にしていただく必要はありません。

チャットに添付するのではなく、受付箱に入れてください。添付された書類は中身を読むことはできますが、ファイルそのものが手元に残りません。受付箱に入れていただければ原本がそのまま保管され、あとから「あのとき渡した資料は、確かにこれ」と確かめられる状態になります。
置き間違えても大丈夫です。受付箱は、記録される前の一時置き場です。違うものを入れてしまったら、取り出せば無かったことになります。整理が済むと中身は保管庫へ移り、受付箱は空に戻ります——捨てる操作は要りません。

入れていただくもの

すでにお持ちのものを、そのまま。

形式は問いません。PDF でも、Word でも、紙をスキャンしたものでも、写真でも構いません。手書きのままで大丈夫です。そのまま受付箱へ。
転記しないでください。様式から書き写す作業は不要ですし、書き写す過程で「誰が言ったのか」が落ちることの方が、こちらとしては困ります。

ひとつだけ、お願いがあるとすれば

様式に書ききれなかったメモも、いっしょに入れていただけると助かります。

フェイスシートには欄があります。欄があるものは、きちんと書かれます。けれど引き継ぎで効くのは、しばしば欄の外にあったことです。

欄に入る

「体に触らないでください」

欄の外

「前の職員さんが落ち着かせようとして肩をつかんだら、余計にひどくなって、その日は一日戻りませんでした」

欄に入る

「通院の付き添いは母」

欄の外

「正直、私も体がきつくなってきていて、そろそろ難しいかもしれません」

後の一方が、次の支援者がその指示を守れるかどうか、そして担い手がいつ細るかを決めます。面談中の走り書き、会議のメモ、雑談で出た一言——清書していない状態のままで構いませんので、写真に撮って受付箱に入れてください。

受付箱に入れたあと、何が起きるか

  1. 受付箱の中が読まれます。開いていただく必要も、説明を添えていただく必要もありません
  2. 仕分けの結果が、先に宣言されます。「これは禁忌として、これは引き金として、これは手順として扱います」と一覧で示されます
  3. 違っていれば、その場で訂正できます。訂正すれば、その通りに直ります
  4. 原本は、書き換えのできない保管庫へ移されます。受付箱はここで空に戻ります。原本はあとから消せない場所に置かれるので、記録の出どころをいつでもたどれます
  5. 手元の記録と支援データベースの両方へ、それぞれの流儀で振り分けられます。「なぜ・どう変わってきたか」の経緯は手元へ、機械が漏れなく拾う必要のある事実はデータベースへ
  6. 実名が入るデータベース側への登録は、必ず確認を挟みます。確認なしに登録されることはありません
  7. 書かれていないことは、書かれないまま残ります。空欄を推測で埋めることはしません
「これは禁忌か、引き金か」「どのページに書くか」を判断していただく必要はありません。

2モニタリング —— ここからが、このガイドの本体

初回の資料は、作った日の姿で止まります。古びさせないための仕掛けは、様式の側にはありません。

そこで、訪問のたびに同じ3つを置いていただくことをお勧めします。新しく聞き出すのではなく、すでにあるものを確かめ直すための3つです。

① 前にうかがった〈この対応〉は、今も同じですか。実際に効きましたか 前回の記録を1つか2つ持って行って確かめる。「変わっていない」と確かめること自体が記録になります。これをしないと、3年前の情報が現在の情報の顔をして残り続けます。
② 変わったこと、もう要らなくなったことはありますか 支援記録は「できないこと」に偏りがちです。「ボタンの手伝いは、この2か月は要らなくなりました」——こうした変化は、意識して確かめないと記録に反映されません。要らなくなった支援がそのまま残ると、本人のいまの力を低く見積もった記録になります。
③ 今回、新しく気づいたことはありますか 計画に書かれた課題の外側を拾う問いです。「買い物でお金を出すとき、後ろの人を気にして焦ってしまう。先に財布から出しておくと落ち着く」——誰も課題として挙げていなかった発見が、次の危機を防ぎます。
モニタリングの記録も、そのまま受付箱に入れていただければ結構です。どこが変わってどこが変わっていないかは、こちらで前回と突き合わせます。

3サービス担当者会議 —— 決めた理由を残す

議事録には「〇〇とすることで合意」と残ります。けれどなぜそう決めたかは、たいてい残りません。半年後にその判断を見直すとき、理由がないと最初から議論をやり直すことになります。

議事録に一行、「この決定の理由」を足していただけると、後から効きます。

もうひとつ、事業所ごとにやり方が違っていた場合は、無理に一本化せず両方そのまま残していただければ、こちらで「食い違いあり」として保留します。どちらが本人に合うかを、後で判断する材料になります。

4更新・節目 —— 担い手を確かめる

受給者証や手帳の更新、区分認定の更新、そして入院・退院・転居・卒業。こうした場面では、それまでの前提が変わります。

記録として残していただきたいのは、「今回、その手続きを誰がやったか」です。期限そのものはこちらで管理できますが、担い手が細っていく過程は、その都度書き留めないと見えません。

親御さんが担ってきた手続きは、体調ひとつで止まります。毎回の担い手を残しておくと、変化が線として見えるようになります。

虐待が疑われる場面は、このガイドの範囲外です。市町村の障害者虐待防止センター等への通報が法律上の義務として先に立ちます。判断に迷う場面は基幹相談支援センターへ。

5渡すときに守っていただきたい3つ

① 清書しない

走り書きでも、書き起こしでも、写真でも構いません。整えていただく必要はありません。

② 誰が言ったかが分かる状態で

母から、世話人から、本人から、医師から。同じ内容でも、出どころによって重みが変わります。様式に記録者欄があれば、それで十分です。

③ 分からないことは、分からないまま

推測で埋めないでください。空欄のほうが安全です。埋めた一行は、後から事実として引き継がれます。

6本人の言葉は、区別して残ります

本人から直接出た言葉は、家族や職員が代弁した言葉と区別して記録されます。「うなずいて『ひとりで、電車、見る』と話した」——この一行が、後から計画の根拠になります。本人の口から初めて出た希望は、そのことを添えて渡していただけると、その後の変化を追えるようになります。

7うまく渡せているかの目安

聞き取りの出来ではなく、渡し方の目安です。

8一度で終わりにしない

情報には鮮度があります。禁忌や対応の手順は、確かめないまま一年も経てば、それが今も正しいのか誰にも分かりません。

新しいことを聞き出すより、すでに聞いたことを確かめ直すほうが、実は価値が高い。
初回の丁寧な聞き取りは、みなさんがすでにされています。このガイドがお願いしているのは、その成果を渡していただくことと、それを古びさせないことの2つだけです。

導入手順についてのお断り:Windows での導入手順は、公開されている情報をもとに書いており、実機での確認が済んでいません。画面の表示や手順が違っていた場合は、お問い合わせからお知らせください。

親なき後支援パッケージ — 計画相談担当者・意思決定支援者版 記録ガイド(初版 2026-08-11)
NPO法人 nest