前回の記事では、「AIって、なんだか怖い」という気持ちを一緒に仕分けました。今回はもうひとつの大きなためらい、「私には難しそう」です。
これも先に結論から。「難しそう」と感じる理由の多くは、パソコン教室の記憶でAIを想像しているからです。メニューの場所を覚えて、手順を暗記して、専門用語のテキストを開いて——。ああいう「覚えることの山」を思い浮かべると、腰が引けるのは当然です。
でもAIは、あの山の逆側にある道具です。これまでの機械は「人間が機械に合わせて」使い方を覚えてきました。AIは初めて、機械のほうが人間に合わせてくる道具なんです。
でも実際、講習とか受けないと使えないんですよね? パソコンも得意じゃないし、今から覚えられる気がしなくて。
では、ためしに聞きますね。LINEで家族にメッセージを送れますか?——送れるなら、AIに必要な操作はもう全部できています。文字を打って、送る。覚える操作は、本当にそれだけなんです。
誤解① 操作を、たくさん覚えないといけない
AIとのやり取りは、チャット(文字の会話)です。画面にあるのは、文字を打つ欄と、送るボタン。メニューの階層も、右クリックの技も、ショートカットも、覚えなくて構いません。
もちろん便利な小ワザは存在します(この連載でも紹介しています)。でもそれは「あとから足せるおまけ」であって、入口の条件ではありません。入口に必要なのは、LINEと同じ操作だけです。
誤解② 専門用語が、わからない
「プロンプトとか、生成AIとか、もう言葉の時点でついていけない」——よく聞く声です。
ここでAIならではの、ちょっと不思議な答えをお伝えします。わからない言葉は、AI本人に聞けばいいんです。
「プロンプト」ってなに? むずかしい言葉を使わずに教えて。
かんたんに言うと、AIへの「お願いの文章」のことです。「献立を3つ考えて」——これでもう立派なプロンプトですよ。
これまでの道具は、取扱説明書を読めない人を置き去りにしました。AIは、取扱説明書まで自分で兼ねる最初の道具です。「もっとやさしく説明して」「例え話で教えて」と言えば、こちらの理解に合わせて言い直してくれます。
誤解③ 機械に伝わる“正しい言い方”をしないといけない
「命令文みたいに、決まった形式で打たないとダメなんでしょう?」——いいえ。曖昧なままで大丈夫です。
この文章、なんかかたい感じがするから、いい感じにやわらかくして。
おまかせください。「なんか」「いい感じ」で、ちゃんと通じています。やわらかくした案を出しますので、好みと違ったら「もうちょっとだけ」と言ってくださいね。
検索エンジンには「キーワードの選び方」のコツが要りましたが、AIには ふだんの話し言葉がいちばん通じます。言い方に迷ったら、迷っていることごと伝えて構いません。「うまく説明できないんだけど……」から始まる相談を、AIはちゃんと受け取ります。
誤解④ 英語が必要・お金がかかる
- 日本語で大丈夫です。 questionもanswerも要りません。敬語でも、方言まじりでも通じます。
- 無料で始められます。 主要なAI(ChatGPT・Geminiなど)には無料で使える範囲があり、この連載で紹介してきた使い方の多くは無料の範囲で試せます。使い込むようになったら有料版を検討すればよく、入口にお金は要りません。
誤解⑤ もう歳だから
いちばん多く聞く言葉で、いちばん もったいない誤解です。
文字を打つのが遅くても、実は問題になりません。スマホのキーボードにあるマイクのマークを押して、話すだけでいいからです。話した言葉はそのまま文字になり、多少言いよどんでも、AIは意味をくみ取ります。
つまり、究極的には「打って、送る」の「打つ」すら省略できて、「話しかけて、送る」になります。電話が使えるなら、できる操作です。むしろ、キーボードの練習を何年もしてきた世代より、音声入力から入る人のほうが早い——そんな逆転が、いま普通に起きています。
3分でできる、はじめてのAI
今日の「はじめの一歩」は、ひとつだけに絞ります。
- スマホまたはパソコンのブラウザで
gemini.google.comを開きます(お持ちのGoogleアカウントでログイン。スマホはアプリでも構いません) - 入力欄を押して、キーボードの マイクのマークを押します
- 声でこう言って、送ります——
返ってきた答えに「2番の作り方を教えて」と返せたら、もう会話が成立しています。これで、AIを使ったことがある人です。
(話しかける内容についてひとつだけ。仕事の情報や利用者さんの情報を入れるときの注意は、別の記事でしっかり扱う予定です。それまでは、個人名や連絡先を入れない、とだけ覚えておけば大丈夫です。)
ひとこと: 「難しくなったら、難しいと言えば、やさしくしてくれる」——難しさの調整つまみが使う側の手元にある道具は、AIが初めてです。だから「私には難しそう」の心配は、そのままAIに話しかけてみてください。「初めてで不安です。ゆっくり教えて」。それが、いちばん正しい使い方です。
あわせて読みたい:AIって、なんだか怖い ― その“怖さ”を、ひとつずつ並べてみた
「こんなこと、パソコンやAIでできる?」というギモンがあれば、お問い合わせフォームからぜひ教えてください。次の「教えてAIさん」で取り上げるかもしれません。