親なき後
遺すのは、お金ではない。
お金より、遺すべきものがある
「親がいなくなったら、この子のことを一番に考えてくれるのは誰だろう」——障がいのある子をもつ親にとって、これは切実な問いです。
多くの場合、その備えとしてまず「お金」が考えられます。けれどもわたしたちは、お金を遺すことが必ずしも本人の幸せにつながるとは限らない、と考えています。 本当に必要なのは、親や家族が長い年月をかけて積み重ねてきた「我が子を守るための知恵」——どんなときに不安になるのか、何を大切にしているのか、誰が支えてくれるのか——そうした暗黙知を、言葉にして遺すことです。
nest がめざすのは、その知恵と、支援者たちの経験を持ち寄り、親なき後も本人の暮らしを支え続けられる「仕組み」をつくることです。
「親なき後」を希望に変える
NPO法人nestが歩んだ15年の挑戦と、これから
「親が元気なうちに、子どもが成人した後の暮らしをどう設計するか」。これは、知的障害や発達障害のある子を持つすべての親が抱える、切実な問いです。
NPO法人nestは、まさにこの「親なき後問題」に真正面から取り組むために誕生しました。設立から15年。積み重ねてきた活動は、単なる福祉サービスの提供を超え、親たちが不安を共有し、地域を巻き込みながら「安心のネットワーク」を創り上げる物語そのものです。
「本気」のスタートが切り開いた自立への道
2011年、親たちの「子どもが成人した後も、この街で自分らしく生きてほしい」という切実な願いから始まった「本気プロジェクト」。ここからすべては始まりました。
既存の施設に預けるのではなく、自分たちの手で暮らしの場を作る。その目標に向け、保護者たちが毎月話し合いを重ね、2012年に「木町STATION」を開設しました。ここでの自立体験プログラムは、親元を離れることへの恐怖を、自立への自信へと変える第一歩となりました。
実践の中で深まる支援の形
nestの強みは、常に現場の声から次の施策を生み出してきたことにあります。
- グループホームの実現(2013年〜)自立体験プログラムを経て、実際に「原町STATION」「木町BRANCH」といった地域生活の場を開設。スタッフの支援を受けながら、当事者が「その人らしい暮らし」を送れるようになりました。
- KAREI(華麗&加齢)プロジェクト(2014年度〜)子どもの衣食住だけでなく、親自身の老後や法律上の手続き、家財の処分といった、避けて通れない「親の身仕舞い」まで含めた具体的な議論をスタート。専門家を交えたサポートネットワークの礎を築きました。
- 巣立ちネットの始動(近年)不安を抱える親子が共に話し合う「あんしん親子会議」や、会員相互の助け合いを目指す互助会「巣立ちネット」を立ち上げました。
「拠点」から「地域」へ――これからの展望
nestの取り組みは、今や一つのNPOの枠を超え、地域全体を耕すフェーズへと移行しています。
直近の「nest巣立ちネット」の運営や、日本財団助成事業「巣立ちプロジェクト」を通じて、意思決定支援の重要性を広め、支援者ネットワークを構築しています。また、カフェ「キッチン&マルシェ木町家」のように、障害のある人が働く場でありながら、地域住民が気軽に立ち寄れる拠点を運営することで、「障害のある人が地域で役割を担う」という共生の形を実現しています。
nestの歩みは、親の「願い」を、当事者の「力」に変え、それを地域の「支え合い」という形に昇華させる過程でした。
「親なき後」は、一人で抱えれば深い闇ですが、仲間とともに仕組みを作れば、それは未来への希望になります。nestがこれまで紡いできたネットワークと、これから創り出す仕組みは、同じ悩みを抱える多くの家族にとって、確かな灯火となるはずです。
知恵を、引き継げる形に
わたしたちは、親や支援者が蓄積してきた知恵を、特定の誰かの記憶だけに頼らず、支援に関わる人たちみんなで引き継いでいけるようにする仕組みづくりに取り組んでいます。
本人の医療・生活の情報、大切にしていること、緊急時に気をつけること、支えてくれる人のつながり——こうした情報を整理して残し、必要なときに必要な人へ確実に引き継げる形にする。 それが、親なき後も途切れない支援を実現するための、nest 発の挑戦です。
その一部は、どなたでも今日から使える無料のテンプレートとして公開しています。専用システムがなくても、ご家庭や支援の現場ですぐに始められます。
※ この仕組みは現在開発中です。実際の利用者・ご家族の情報を本ウェブサイト上で扱うことはありません。
知恵と仕組みを、分かち合う
nestがこれまでに積み重ねてきた資料・しくみ・研修を、
どなたでも無償でご活用いただけます。