Supported Decision-Making / 意思決定支援
代わりに決めるのではなく、
決める経験をサポートする。
About

「決める」を、本人の手に

「私たちのことを、私たち抜きで決めないで」——。意思決定支援とは、本人に代わって 周囲が決めてしまうのではなく、本人が自分のことを自分で選び、決められるように支える 考え方です。何を食べるか、どこで暮らすか、誰と過ごすか。大きなことも小さなことも、 本人の「こうしたい」を出発点に置きます。

決めることには、迷いや失敗もついてきます。それでも、選び、決め、その結果を引き受ける 経験の積み重ねこそが、自分らしく生きる力を育てます。nest は、周囲が先回りして 決めてしまうのではなく、本人が「決める経験」を重ねられるよう、となりで伴走します。

巣立ちプロジェクトでは、こうした意思決定支援の担い手を育てる養成講座にも取り組んで きました。「決める経験をサポートする」——その姿勢を、地域全体で共有して いくことを目指しています。

10分間弱のスライド動画を用意しています。ゆっくりして行ってください。

図解「意思決定支援の核心:本人が人生の主語であるために」。意思決定支援とは本人の代わりに正しい選択をすることではなく、本人が自ら決めるプロセスを支え、奪われてきた決める権利を本人の手に返す営み。『代行から支援への転換』『善意による権利侵害を防ぐ』『憲法第13条に基づく権利』という誤解と正体、そして『小さな選択を育てる足場かけ』『結論ではなく過程を支える』『非対等性の自覚と暗黙知の継承』という実践の3つのアプローチを示す。
解説動画:意思決定支援の真実と権利
From the Report

「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」

障がいのある子を持つ親にとって、「親亡き後、この子はどう生きていくのか」という問いは、 静かで、しかし切実な不安です。その不安を出発点に始まった親たちの勉強会は、やがて 「障がい者の巣立ちを促す地域生活支援(巣立ちプロジェクト)」となりました。

活動報告書に綴られていたのは、「本人のため」と信じてきた私たちの善意が、 知らぬ間に本人の意思を置き去りにしていなかったか——という、率直な問い直しでした。 「親が安心できる未来」は、本当に「本人が望む未来」と重なっているのか。 ここでは、報告書から見えてきた4つの気づきをご紹介します。

支援は「本人のニーズ」から始まる

プロジェクトの根底にあるのは、世界の障がい者運動が掲げてきた 「Nothing About Us Without Us(私たちのことを、私たち抜きで決めないで)」という言葉です。

これまでの支援は、親や専門家が「本人のため」という名目で先回りし、進路や暮らしを整えてきた 面がありました。けれど真の支援とは、代わりに行き先を決めることではなく、本人が人生のハンドルを 握ることを尊重し、その意思を形にする「伴走者」になることです。障がいのある人を 「保護される客体」から「自らの人生を決める主体」へ——その視点の転換が問われています。

「性」は、人権そのものだった

プロジェクトが踏み込んだのが「生と性」の視点でした。性教育を、単なるマナーや知識の伝達ではなく、 「包括的性教育=人権としての教育」として捉え直すこと。たとえば、人前で性器に触れてしまう 知的障がいのある子。「恥ずかしい」「やめなさい」と禁止して終えるのではなく、本人が安心して 過ごせる環境を整えることが大切だと、報告書は説きます。

否定は自尊心を傷つけます。だからこそ「プライベートとパブリック」の違いを伝え、 手遊びグッズなどの代替行動を一緒に考える。性を語ることは、自分の尊厳と他者との境界線を学び、 「より良く生きる権利」を保障することにほかなりません。

「リスク回避」が、支配になっていないか

支援者や親が気づきにくいのが、無意識の「パターナリズム(よかれと思っての干渉)」です。 「失敗させたくない」という思いが、皮肉にも本人の成長の機会を奪ってしまう。

「支援者はリスクより安全を選びがち」——報告書のこの言葉は、何度も胸に刺さりました。

本人が挑戦し、たとえ失敗しても、その経験を糧に次へ進む。私たちは、その「失敗する権利」を 認める覚悟があるでしょうか。リスクをゼロに抑え込む管理ではなく、リスクを共に引き受けながら 挑戦を支える関係こそが、ほんとうの自立を育てます。

「知らないから伝えられない」を、断ち切る

なぜ意思決定支援や性教育はこれほど難しいのか。それは、私たち大人自身が、学ぶ機会を 十分に持てなかったからです。報告書には「どう伝えていいか分からず、つい誤魔化してしまう」という 戸惑いの声が並びます。

だからこそ、自らの「知らなさ」を認め、学び直す勇気を持ちたい。大人の気恥ずかしさが、 子どもたちを困惑のなかに置き去りにする——その負の連鎖を、私たちの世代で終わらせたいのです。 報告書は、こんな決意で結ばれていました。

温泉は出るまで掘る。ならば、包括的性教育が当たり前になるまで、へこたれない。

未来へつなぐバトン

「意思決定支援」は、障がい福祉だけの話ではありません。老いや病い、人生の困難に直面したとき、 誰もが「自分らしくありたい」と願う——その普遍的な権利の話です。

「あなたのため」という言葉で、本人の意思を塗りつぶしていないか。誰かの可能性を信じ、 その人の「失敗」さえも権利として尊重できるか。「巣立ち」とは、温かい場所から突き放すことではなく、 本人が自らの意思で羽ばたこうとしたとき、その空に不必要な障害物がない社会を整えることだと、 私たちは考えています。

A New Tool

「つたえるカード」——指さしで、気持ちを伝える

意思決定支援の考え方から、ひとつの小さな道具が生まれました。仮称「つたえるカード」は、 スマホの画面に並んだカードを指さすことで、そのときの気持ちや体調、困りごとを伝えられる 無料のアプリです。

「分かる形で選択肢を見せる(意思形成の支援)」と「指させる(意思表明の支援)」を、 その場ですぐ使える形にしました。入力したことはすべて端末の中だけに残り、 アカウント登録もログインもいりません。

アプリの紹介・つかい方を見る

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