研修資料を配るとき、いつも同じ不安があります。読んでもらえたか、分からない。 確認テストを作ればいいのは分かっていても、問題を10問考える時間がない。この記事は、その10問を AI に作ってもらった実例です。頼み方の一言で、資料が「読むもの」から「押すもの」に変わります。
うまくいった頼み方を、そのときの文面と、返ってきたものごと一つずつ並べる特集です。これがその2。
個人情報のルール、去年も配ったんです。でも「読みました」の返事だけで、本当に分かってるかは……。テストを作ろうにも、問題を考える時間がなくて。
資料の文章を、そのまま私に貼ってください。「押すと正解と解説が出る形(HTML)で」と添えてもらえれば、読む資料でなく、押して確かめる資料にします。
お願いした文面(そのまま)
題材は、架空の事業所「潮見町ワークス」の、個人情報の取り扱いルール12項目です。実在の事業所の資料ではありませんが、どこの現場にもある内容にしてあります。依頼文の下に、この12項目をそのまま貼りました。
【研修資料】個人情報の取り扱い ― 潮見町ワークス 職員向けルール(抜粋)
(下の12項目)
貼った研修資料(12項目)を開く
- 利用者の氏名・住所・生年月日・障害の状況・健康状態・家族の情報は、すべて個人情報です。支援記録や連絡帳、写真も含みます。
- 個人情報を含む書類やUSBメモリを事業所の外へ持ち出さない。持ち出す必要がある場合は、管理者の許可を得て、持ち出し簿に記録する。
- 利用者の写真や動画を、本人と家族の同意なしに撮影・掲示・配布しない。行事の写真を広報に使うときは、その都度、用途を伝えて同意を取る。
- 職員個人のスマートフォンで利用者の写真を撮らない。撮影は事業所のカメラかタブレットで行う。
- 利用者のことを、個人のSNS(X・Instagram・LINEのタイムライン等)に書かない。名前を伏せても、場所や状況で本人が特定されることがある。
- 電話で利用者の在籍や様子を聞かれても、その場では答えない。相手の名前と連絡先を聞き、管理者に相談してから折り返す。家族を名乗る場合も同じ。
- 個人情報を含む書類は、机の上に置いたまま離席しない。退勤時は施錠できる棚に戻す。
- 不要になった書類はシュレッダーにかける。ゴミ箱にそのまま捨てない。
- メールやFAXで個人情報を送るときは、宛先を二人で確認する。誤送信に気づいたら、すぐ管理者に報告する。
- 個人情報を紛失した・漏らしたかもしれないと思ったら、隠さず、その日のうちに管理者へ報告する。報告が早いほど被害を小さくできる。
- 利用者本人や家族から「記録を見せてほしい」と言われたら、その場で見せず、管理者につなぐ。開示の手続きが決まっている。
- AIチャットや翻訳サイトに、利用者の実名や支援記録をそのまま貼り付けない。使うときは名前を伏せ、特定できる情報を取り除く。
返ってきたもの
返事の一行目は、こうでした。
研修資料の12項目を10問に組み直し、現場で起こりがちな判断ミスを「やりがち」のラベル付きで選択肢に入れました。
そして一枚のページ。上から、問題番号、場面の一文(「新人職員から質問されました」「FAXを送った直後、番号を1桁間違えていたことに気づきました」)、問い、三つのボタン。押すと、正解が緑、押した不正解が赤になり、赤い選択肢には「現場でやりがち」の札と「なぜだめか」の一言が出ます。下に解説と「ルール◯」の札。10問答えると、点数と一言が出ます。
依頼文にない工夫が、いくつも入っていました。場面の一文、進み具合の棒、点数、点数ごとの一言、そしてページの一番下の「登場する『Aさん』などは架空の人物です」の注意書き。頼んでいないことまで、現場の研修らしく仕立ててきています。
どこが効いたのか ― 依頼文の解剖
「個人情報のクイズを作って」ではなく、資料を渡して、それをもとにと言っています。これがないと、AI は世間一般の個人情報クイズを作ります。うちのルール(持ち出し簿、事業所のタブレット、管理者に折り返す)は、渡さない限り知りません。
相手(職員)、形(三択)、数(10問)。三つとも数えられる言葉です。数で言うと、返ってくるものの大きさが決まります。
今回の主役です。「クイズを作って」だけなら、問題と答えの一覧が文字で返ってきます。それでも使えますが、答えが見えている紙のクイズは、読んで終わりです。「押すと出る」と「HTML」 の組み合わせで、答えを隠して、押した瞬間に色で返す形になりました。
三択の不正解が、明らかに変な選択肢だとクイズになりません。「現場でやりがち」と言ったことで、不正解が 本当に迷う選択肢 になりました。「翌朝きちんと戻せばよい」「フォロワー限定なら問題ない」「家族なので在籍を伝える」。どれも、現場で聞いたことがある言い分です。
赤と緑、札、棒。押した結果が目で分かるのは、この一言が効いています。
確かめたこと ― AI は、資料にないことも足してくる
10問の正解を、貼った12項目と一つずつ照らしました。正解はすべて資料どおりでした。ルール7と8、9と10はそれぞれ一問にまとめられていて、12項目が10問に収まっています。
ただし、解説には資料に書いていないことも混ざっていました。「紛失は通勤途中や車内で起きています」「手で破いた紙は復元できます」「鍵アカウントもスクリーンショットで外に出ます」。どれも一般論としては筋が通っていますが、資料が言っていることではありません。研修で使うなら、ここは自分の目で読んで、事業所の言い分と違うところは直す。AI が作ったクイズは、そのまま配るものではなく、下書きです。
向く資料、向かない資料
- 向く — ルールが箇条書きになっている資料。年に一度の周知(個人情報、感染対策、送迎の安全)。新人オリエンテーションの確認。
- 向かない — 正解が一つに決まらない事例検討。法律の条文そのものの解釈(資料に書いていないことを AI が補ってしまう)。点数を記録して受講管理に使いたいとき(このクイズの点数は、その場の画面にしか残りません)。
出てきた HTML の、開き方
その1に書いたとおりです。画面に描かれればそのまま。文字のかたまりで出てきたら、「ファイルとして保存できる形にして」と頼むか、メモ帳に貼って末尾を .html にして保存。ファイルにしておけば、共有フォルダに置いて、職員がめいめいのタブレットで開けます。
注意
- 資料に実名があれば消してから貼る。 研修資料に利用者や職員の名前が入っていることは意外とあります。「A さん」に置き換えてから。
- 正解は、資料と照らす。 上に書いたとおり、AI は資料にない知識を足します。
- 点数は残らない。 誰が何点かはどこにも送られません。受講の記録にはならない代わりに、安心して何度でも間違えられます。
こんな風に応用できます
型はこうです。何をもとに → 相手と形と数 → 押すと出る形(HTML) → 特に、間違いの質 → 目的。
配っただけの資料が、押して確かめる資料になります。次に「読んでもらえたかな」と思ったら、資料の文章を、そのまま貼ってみてください。