新しい手順を知らせるとき、私たちはつい文章を書きます。「送迎バスが新しくなります。玄関でお名前を言って、青い帽子の職員について……」。貼り紙としては正しい。でも、一度に全部を読むのが難しい人には届きません。この記事は、その手順を、一枚に一つずつめくる紙芝居にしてもらった実例です。
うまくいった頼み方を、そのときの文面と、返ってきたものごと一つずつ並べる特集です。これがその3。
来月からバスの乗り方が変わるんです。貼り紙はしたんですけど、字がたくさんあると、見ない人がいて。一人ずつ口で説明するのも、毎朝は……。
貼り紙は、全部を一度に見せます。それがつらい人がいるなら、一枚に一つだけ見せる形にしましょう。手順を順番に書いて渡してください。紙芝居にします。
お願いした文面(そのまま)
手順:①玄関で名前を言う ②青い帽子の人についていく ③シートベルトをする ④着いたら「ついた」と言う
返ってきたもの
返事の一行目は、こうでした。
知的障害のある方向けに、一枚一つ・大きな絵文字・ひらがな分かち書きで作りました。上部の「①②③④」で今どこにいるかが一目で分かり、終わった段階には✔がつきます。
表紙(🚌「あたらしい バスの のりかた」「ボタンを おしてね」)→ 4枚 → 「🎉 おしまい! じょうずに のれたね」の6枚。上に丸が四つ並び、いま何番目かがオレンジ、終わった番号は緑の✔に変わります。「つぎへ」は大きな緑、「もどる」は小さな灰色。
頼んでいないのに入っていたもの:ひらがなの分かち書き、表紙と「おしまい」、キーボードの矢印でもめくれる仕掛け、そして「もどる」を目立たない色にした理由。返事の補足に、こうありました。
「もどる」ボタンは小さく目立たない色にしてあり、迷ったときに支援者が戻せる程度にしています。
「一枚に一つ」の意図を汲んで、戻る操作まで控えめにしています。
さわって気づいたこと
実際に画面で通してみて、一つ気づきました。画面の幅が狭いと、表紙の「のりかた」が「のりか」と「た」に折れて表示されました。中身の4枚は大丈夫でしたが、文字の折れ方は端末で変わります。本番で使うタブレットで、一度は通してください。気になれば「表紙の題名が途中で折れないようにして」と一言足せば直ります。
どこが効いたのか ― 依頼文の解剖
これで、文の長さ、字の大きさ、ひらがな、絵文字の量が決まりました。相手を言わなければ、職員向けの手順書が返ってきます。
「紙芝居」という言葉が、形を決めています。一枚ずつ、大きく、順番に。
今回の主役の一つ目です。これがないと、一枚に手順を全部書いた「きれいな貼り紙」が返ってきます。「一つのことだけ」 と言ったことで、AI は情報を削るほうに動きました。
主役の二つ目。ボタンの名前まで言っています。「HTML」の一言で、めくる・戻る・✔が付く、が動くものになりました。
上の①②③④の丸と、終わった番号の✔は、この一言から出ています。「いま何番目か」が分かるのは、手順を覚えるうえで大事なところです。
中身は、こちらが渡しています。AI が考えたのは見せ方で、手順は現場のものです。ここを AI に考えさせないのが、安心して使えるコツです。
向く手順、向かない手順
- 向く — 順番が決まっていて、毎回同じ流れのもの。手洗い、出勤したらやること、休憩室の使い方、新しい機械のボタン。写真を足したければ、「絵文字のところに、あとで写真を入れられるようにして」と一言足せば、そうなります。
- 向かない — その場の判断が要るもの(「困ったら」の場面)。緊急時の手順(画面を開く時間があるなら、紙のほうが早い)。
出てきた HTML の、開き方
その1のとおりです。タブレットに入れて、玄関で本人と一緒にめくるのが、いちばん使いやすい形です。ホーム画面に置く方法は「うちだけのアプリ」の記事に書きました。
注意
- 本人と一緒に見て、直す。 分かるかどうかは、本人にしか分かりません。絵文字が違うものに見える、言葉が違う、順番が違う。気づいたことを一言ずつ AI に戻せば、直ります。
- 名前は、自分で書き換える。 表紙の次の「〇〇 です」は、AI も「実際のお名前に書き換えて」と補足していました。利用者の名前を AI に渡さず、出てきたファイルの中で自分で書き換えてください。書き換える場所は返事の補足に書いてあります。
- 絵文字の見え方は端末で違う。 パソコンで作って、タブレットで一度通す。
こんな風に応用できます
型はこうです。相手 → 何の手順 → 一枚に一つのことだけ → めくれる形(HTML) → 特に、順番 → 手順そのもの。
貼り紙で届かなかった人に、一枚ずつ届ける。頼み方は「一枚に一つ」と「めくれる形」の二言です。