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医療的ケア児支援法は大人も対象になる ― 18歳で切れない支援へ、2027年4月施行

医療的ケア児支援法が、題名ごと変わります。「医療的ケア児及びその家族」のための法律が、18歳を過ぎた医療的ケア児等と重症心身障害者、そのご家族 も対象にする法律になります。2027年4月1日施行です。

医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第77号)
2026年7月24日成立/同年7月31日公布
改正後の題名:医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)
関連政令:同法第十四条第一項の政令で定める市を定める政令(令和8年政令第332号、2026年10月23日公布)

2021年に施行された医療的ケア児支援法は、人工呼吸器やたんの吸引が日常的に要る子どもが保育園や学校に通えるようにするための法律でした。この法律には、よく知られた限界がありました。対象が「児童」なので、本人が18歳になり学校を出ると、法律の支えから外れてしまうことです。いわゆる「18歳の壁」です。今回の改正は、この壁を法律の側から取り除き、あわせて重症心身障害者を支援の対象に加えました。

法律そのものは7月に公布済みですが、施行準備はこの秋に動いています。10月23日には、支援センターを設置できる市を定める政令が公布されました。障害福祉計画の基本指針(厚生労働省告示)も、この改正を織り込む形で改められる予定です。

改正法の施行
2027年4月1日
政令(支援センターを置ける市=中核市)
2026年10月23日公布、2027年4月1日施行
障害福祉計画の基本指針の改正
2026年10月下旬に告示予定(意見募集時の予定。10月26日時点で告示は確認できず)、2027年4月1日適用
法律の見直し
施行後3年を目途(附則3条)

1. 全体像 ― 子どもの法律から、大人も含む法律へ

現行法が支援の対象とするのは「医療的ケア児」とその家族です。医療的ケア児とは、日常生活と社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為)を受けることが不可欠な児童をいいます。18歳以上でも高校等に在籍していれば含まれますが、卒業すれば外れます。

改正法は、ここに2つの新しい定義を置きました。ひとつは 「医療的ケア児等」 で、医療的ケア児だった人を含みます。子どものころに医療的ケアがなかった人も、恒常的な医療的ケアが不可欠で自立した生活が難しい状態にあれば含まれます。もうひとつは 「重症心身障害者」 です。重度の知的障害と重度の肢体不自由が重なっている人をいい、医療的ケアの有無は問いません。

改正後
現行
(定義) 第二条 3 この法律において「医療的ケア児等」とは、次に掲げる者をいう。
 一 医療的ケア児
 二 医療的ケア児であった者であって、日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠であるもの
 三 日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠であり、かつ、これにより自立した日常生活又は社会生活を営むことが困難な状態にある者(前二号に掲げる者を除く。)
4 この法律において「重症心身障害者」とは、重度の知的障害及び重度の肢体不自由が重複している者をいい、「重症心身障害児」とは、重症心身障害者のうち児童であるものをいう。
(定義) 第二条 (1項:医療的ケアの定義、2項:医療的ケア児の定義のみ)
3 〔新設〕
4 〔新設〕

※ 現行の2条は「医療的ケア」と「医療的ケア児」の定義だけで終わっている。3項・4項は改正で追加された。

読みどころは4つです。

① 年齢で切れない。3項2号は「医療的ケア児であった者」です。学校を卒業しても、医療的ケアが続いていれば、この法律の対象であり続けます。
② 大人になってから医療的ケアが始まった人も入る。3項3号は、医療的ケア児だった経歴を問いません。「交通事故や病気で成人後に人工呼吸器が必要になった」という人も、自立した生活が困難な状態にあれば対象です。ただし3号には「自立した日常生活又は社会生活を営むことが困難」という絞りがあります。公布通知は、夜間の経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)だけ、在宅酸素療法だけ、といった場合は該当しないと例を挙げています。
③ 重症心身障害者は、医療的ケアがなくても対象。4項の定義に医療的ケアの要件はありません。「重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複」という、児童福祉の実務で長く使われてきた概念が、年齢の上限なしにこの法律の定義として置かれました。
④ 題名が変わる。法律の題名が「医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族に対する支援に関する法律」になります。「医療的ケア児支援センター」も「医療的ケア児等支援センター」に改称されます。自治体の計画・要綱・看板の名称が順次変わっていくことになります。

対象の人数を見ておきます。こども家庭庁の資料(2026年8月時点)によれば、在宅の医療的ケア児(0〜19歳)は推計で2万人を超え、2025年は2万1,496人です。これは研究班の推計値で、法律上の定義で数えた人数ではありません。新たに対象となる18歳以上の医療的ケア者と重症心身障害者の人数は、この資料にはありません。改正法21条2項は「数の把握」のための調査研究を国と地方公共団体に求めており、対象者が何人いるかはこれから数える段階です。

2. 18歳の壁 ― 「切れ目なく」が基本理念に書き込まれた

現行法にも、18歳を過ぎた後への「配慮」はありました。改正法はそれを一段強め、18歳を過ぎても「希望する地域において日常生活及び社会生活を営むことができるようにすること」を支援の目的そのものに据えました。

改正後
現行
(基本理念) 第三条 3 医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族に対する支援は、医療的ケア児及び重症心身障害児が十八歳に達し、又は高等学校等を卒業した後も切れ目なく適切な保健医療サービス及び福祉サービスを受けながら、医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族が希望する地域において日常生活及び社会生活を営むことができるようにすることを旨として行われなければならない。
(基本理念) 第三条 3 医療的ケア児及びその家族に対する支援は、医療的ケア児が十八歳に達し、又は高等学校等を卒業した後も適切な保健医療サービス及び福祉サービスを受けながら日常生活及び社会生活を営むことができるようにすることにも配慮して行われなければならない。

「配慮して」が「旨として」に変わりました。「配慮して」は、支援をするときに気をつける事柄のひとつという書き方です。「旨として」は、18歳以降も支援を受けながら暮らせるようにすることを、支援の基本方針とする趣旨と考えられます。「切れ目なく」「希望する地域において」という言葉も加わりました。18歳以降の暮らしが、付け足しではなく支援の本体に位置づけられたと読めます。

この理念を具体化する条文として、第十一条の二(切れ目ない医療の提供)が新設されました。国と地方公共団体は、医療的ケア児と重症心身障害児が「十八歳に達した後も切れ目なく地域で必要な医療を受けられるよう必要な措置を講ずるものとする」と定めています。小児科から成人診療科への移行、いわゆる「トランジション」の問題に、法律が正面から触れた条文です。何をどこまでやるかは書かれておらず、今後の施策で埋められる部分です。

3. 日常生活の支援 ― レスパイト・通学・重度訪問介護を名指しした

ご家族の暮らしにいちばん近いのが第十一条です。現行は1文の短い条文でしたが、改正後は支援の中身を具体的に列挙しています。

改正後
現行
(日常生活における支援) 第十一条 国及び地方公共団体は、医療的ケア児等及び重症心身障害者の地域社会における自立を支援し、並びにそれらの家族の身体的及び精神的な負担を軽減するため、…個々の医療的ケア児等及び重症心身障害者の年齢、必要とする医療的ケアの種類及び生活の実態に応じて、医療的ケアの実施、一時的に預かり必要な保護を行うサービス、夜間に居宅において提供される保健医療サービス又は福祉サービス、通学等の移動の支援、重度訪問介護…その他の日常生活において必要な支援を受けられるよう、福祉サービスを提供する事業所への看護師等の配置の促進その他の必要な措置を講ずるものとする。
(日常生活における支援) 第十一条 国及び地方公共団体は、医療的ケア児及びその家族が、個々の医療的ケア児の年齢、必要とする医療的ケアの種類及び生活の実態に応じて、医療的ケアの実施その他の日常生活において必要な支援を受けられるようにするため必要な措置を講ずるものとする。

読みどころは3つです。

① 目的に「家族の負担軽減」が入った。現行の11条は本人の支援だけを書いていました。改正後は、本人の自立の支援と並べて、家族の身体的・精神的な負担を軽くすることが条文上の目的になりました。レスパイト(一時的に預かって家族を休ませること)を、家族のための支援としても位置づけたと読めます。
② サービスを名指しした。「一時的に預かり必要な保護を行うサービス」は短期入所や日中一時支援、「夜間に居宅において提供される…サービス」は夜間の訪問看護や居宅介護を指す書きぶりです。「通学等の移動の支援」は、保護者が送迎を担っている現状への応答です。「重度訪問介護」は障害者総合支援法のサービス名がそのまま入りました。
③ 事業所への看護師等の配置を「促進」する。これは、福祉サービス事業所が看護師を置く義務を負うという条文ではありません。主語は国と地方公共団体で、配置を進めるための措置を講じる、という構造です。措置の中身として補助や報酬上の評価が考えられますが、条文には書かれていません。この部分が実際にどう効くかは、令和9年度の障害福祉サービス等報酬改定の議論を見る必要があります。

誤解しやすい点。この法律の条文の多くは「国及び地方公共団体は…措置を講ずるものとする」という形です。国と自治体に施策を求める規定です。本人やご家族が「この法律を根拠に短期入所を使える」「事業所に看護師の配置を求められる」といった、請求できる具体的な権利を認めるものではないと考えられます。使えるサービスの中身と量は、引き続き障害者総合支援法・児童福祉法の支給決定と、各自治体の事業で決まります。この法律は、その土台となる施策の方向を国と自治体に義務づけるものです。

4. 新しい条文 ― 医療・就労・住まい・ピアサポート

11条のほかにも、条文が多数新設されています。現行法にはなかった規定を表にまとめます。いずれも主語は国・地方公共団体(11条の3第3項は事業主)で、「措置を講ずるものとする」「努めなければならない」という書き方です。

条新設された内容読者にかかわるところ
8条の2政府は講じた施策の資料を作成・随時公表する。地方公共団体は実施状況の公表に努める自治体ごとの取組の差が見えるようになる
10条2項・3項保護者の付添いなしで授業に出席し、修学旅行その他の行事に参加できるよう、学校等の設置者は看護師等・介護従事者の配置等の措置を講ずる。生涯学習の推進「行事は親が付き添う」という扱いの見直し
11条の218歳に達した後も切れ目なく地域で必要な医療を受けられるよう措置を講ずる小児科から成人の診療科への移行
11条の3在宅勤務など特性に応じた就労形態の確保、定着支援、事業主への支援。学校での就労準備支援。事業主は能力を正当に評価し雇用の安定を図るよう努める就労系サービスと一般就労の両方
11条の4本人と家族が希望する期間入居できる「共同生活を営むべき住居その他の地域において生活を営むべき住居」の確保のために措置を講ずるグループホームと、一人暮らしなど地域のほかの住まい。親なき後の住まい
12条2項本人・家族が孤独・孤立しないよう、互いに支え合う交流活動への支援、関係機関の紹介家族会・ピアサポート活動への公的支援
18条の2都道府県等は、本人・家族・学識経験者・関係機関等で構成する「医療的ケア児等支援地域協議会」を置くことができる。協議が調った事項は構成員が尊重する当事者・家族が協議会の構成員として明記
20条の2国は、家族の負担軽減に資するよう、医療的ケアの提供の在り方を適宜見直す誰がどこまで医療的ケアを行えるかの議論
22条国と地方公共団体は、支援センターの体制や教育の実施状況など地域格差を検証し、是正の措置を講ずる住む地域による差を縮める根拠条文

11条の4は、住まいを二つに分けて書いています。ひとつは「共同生活を営むべき住居」で、障害者総合支援法の共同生活援助(グループホーム)を指す表現です。看護職員を置いて医療的ケアに対応するグループホームや、日中も住まいで支援を受ける日中サービス支援型も、ここに含まれます。もうひとつは「その他の地域において生活を営むべき住居」で、グループホーム以外の地域の住まいを広く含む表現です。重度訪問介護や訪問看護を使ってアパートや公営住宅で暮らす場合や、グループホームと連携して一人で暮らすサテライト型住居などが考えられます。

もうひとつ見ておきたいのが「希望する期間入居できる」という言葉です。医療的ケアに対応できるグループホームは、看護職員の確保の難しさから数が限られてきました。空きを長く待つ人や、入所施設や病院での生活を続けざるを得ない人もいます。この条文は、本人とご家族が望むあいだ住み続けられる住まいの確保を、国と自治体の仕事として明記したものです。ただし、具体的にどんな措置を講じるかは条文には書かれていません。

11条の3第3項は、雇う側である事業主に向けた規定です。「雇用の安定を図るよう努めなければならない」という努力義務です。障害者雇用促進法の雇用義務とは別の、理念的な規定にとどまります。

5. 支援センター ― 中核市にも置けるようになり、災害時の役割が加わる

各都道府県に置かれている医療的ケア児支援センターは、ご家族の相談窓口であり、関係機関の調整役でもあります。こども家庭庁の一覧(2026年3月時点)では、47都道府県すべてに設置されています。改正法は、このセンターの設置主体・対象・業務を広げました。

改正後
現行
(医療的ケア児等支援センター等) 第十四条 都道府県、…指定都市、…中核市その他の政令で定める市又は特別区(以下「都道府県等」という。)の長は、次に掲げる業務を、社会福祉法人その他の法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者(…「医療的ケア児等支援センター」という。)に行わせ又は自ら行うことができる。
 一 医療的ケア児等及び重症心身障害者(進行性の疾病その他の事由により医療的ケア児等又は重症心身障害者となることが相当程度見込まれる者を含む。…)並びにそれらの家族その他の関係者に対し、専門的に、その相談に応じ、又は情報の提供若しくは助言その他の支援を行うこと。
 四 医療的ケア児等及び重症心身障害者に係る個別避難計画…の作成について協力を行うこと。
 五 災害時において市町村(特別区を含む。)と連携して…必要な情報の提供を行うこと。
(医療的ケア児支援センター等) 第十四条 都道府県知事は、次に掲げる業務を、社会福祉法人その他の法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者(以下「医療的ケア児支援センター」という。)に行わせ、又は自ら行うことができる。
 一 医療的ケア児(十八歳に達し、又は高等学校等を卒業したことにより医療的ケア児でなくなった後も医療的ケアを受ける者のうち引き続き雇用又は障害福祉サービスの利用に係る相談支援を必要とする者を含む。…)及びその家族その他の関係者に対し、専門的に、その相談に応じ、又は情報の提供若しくは助言その他の支援を行うこと。

※ 現行の4号(附帯業務)は6号に繰り下がり、個別避難計画と災害時の情報提供が4号・5号として挿入された。

読みどころは3つです。

① 設置主体が「都道府県等の長」に広がった。現行は都道府県知事だけでした。改正後は指定都市、中核市、特別区の長もセンターを指定できます。「その他の政令で定める市」の中身を決めたのが、10月23日公布の政令第332号です。政令は、これを地方自治法上の中核市と定めました。つまり、一般の市が独自にセンターを置く道は、今回の政令では開かれていません。
② 相談の対象が広がった。現行法は、18歳を過ぎた人については「雇用又は障害福祉サービスの利用に係る相談」に限って対象にしていました。改正後はこの限定がなくなります。さらに「進行性の疾病その他の事由により…なることが相当程度見込まれる者」が加わりました。筋疾患などで将来の医療的ケアが見込まれる人が、ケアが始まる前から相談できるようになります。
③ 災害時の役割が明記された。個別避難計画(災害対策基本法に基づき、市町村が避難行動要支援者ごとに作る計画)の作成への協力と、災害時に市町村と連携した情報提供が、センターの業務になりました。人工呼吸器の電源確保など、医療的ケアのある人にとって災害は命に直結する問題です。

設置主体が広がると、都道府県のセンターと市のセンターが並び立つ地域が出てきます。基本指針の改正案(社会保障審議会障害者部会第158回資料)は、指定都市・中核市・特別区が「必要に応じて」設置できることと、都道府県と連携することを書き込む方向です。どの市が手を挙げるかは、施行後に各自治体の判断で決まります。

協議会についても一言。改正法18条の2の「医療的ケア児等支援地域協議会」は、都道府県等が「置くことができる」任意の規定です。ただし基本指針の改正案は、都道府県に対し、これまでの「協議の場」に代えて協議会を設置することを基本とする方向です。構成員には本人と家族が条文で明記されており、当事者・家族が地域の支援体制を協議する場の正式な一員になります。

6. いま支援を受けている人はどうなるか

改正法の附則は3条だけです。1条が施行期日、2条が経過措置、3条が見直しです。

経過措置はひとつだけで、現行法に基づいて指定を受けている医療的ケア児支援センターは、施行日に改正法の医療的ケア児等支援センターの指定を受けたものとみなされます(附則2条)。附則2条の限りでは、いま各都道府県にあるセンターの指定が施行日に切れることはありません。名称と業務の範囲が変わり、相談先は続きます。

それ以外の経過措置はありません。施行日の2027年4月1日から、新しい定義と条文が一斉に適用されます。立場ごとに整理すると次のとおりです。

いまの立場施行日以後
医療的ケア児(18歳未満、または高校等に在籍)引き続き「医療的ケア児」として対象。保育・教育の規定は現行どおりで、介護従事者の配置などが措置の例示に加わる
学校を卒業した医療的ケアのある人「医療的ケア児等」(2条3項2号)として対象になる。センターへの相談は、雇用・障害福祉サービスに限らず全般に広がる
成人後に医療的ケアが始まった人自立した生活が困難な状態にあれば「医療的ケア児等」(2条3項3号)として対象になる。夜間のCPAPだけ・在宅酸素だけでは該当しない
重症心身障害のある人(年齢を問わない)「重症心身障害者」「重症心身障害児」として、はじめてこの法律の対象になる
ご家族11条の目的に「家族の身体的及び精神的な負担を軽減する」が入る。12条2項で交流活動への支援が規定される。協議会の構成員として明記される

支給決定を受けて使っているサービスの内容や量が、施行日に自動的に変わることはありません。この法律は施策の方向を定めるもので、個々のサービスの中身は障害者総合支援法・児童福祉法とその報酬・基準で決まります。施行日に変わるのは、国と自治体が負う施策の義務の範囲です。

7. 福祉の現場とご家族が施行までに考えておくこと

施行まで5か月あります。条文から見えている準備の観点を挙げます。

自治体の障害福祉計画に目を向ける。 令和9年度から始まる第8期障害福祉計画・第4期障害児福祉計画は、改正後の基本指針に沿って作られます。基本指針の改正案は、医療的ケア児等支援地域協議会の設置や、医療的ケア者・重症心身障害児者を対象に含めることを書き込む方向です。多くの自治体では、計画案の段階で住民の意見募集が行われます。そこで「18歳以降の医療的ケア者の受け入れ先」「重症心身障害者のグループホーム」を論点として出すことができます。

協議会への参加を考える。 18条の2は、本人と家族を協議会の構成員として明記しました。都道府県がこれまでの協議の場を協議会に切り替えるとき、当事者・家族の委員をどう選ぶかが問われます。家族会や事業所として、協議会への関わり方を今から考えておく意味があります。

グループホームと短期入所の受け入れ体制。 11条の4は共同生活を営むべき住居の確保を、11条は一時的に預かるサービスや夜間のサービスと看護師等の配置の促進を、国と自治体の施策として明記しました。これが報酬上の評価につながるかは、まだ決まっていません。令和9年度報酬改定の検討チームでは、障害児支援(10月5日)と短期入所(10月22日)の議論が進んでいる段階です。事業所としては、医療的ケアのある人・重症心身障害のある人を受け入れるときに何が足りないかを、具体的に言葉にしておくことが準備になります。

18歳前後の「トランジション」を記録に残す。 11条の2は、18歳以降も切れ目なく地域で医療を受けられるようにすることを求めています。学校を卒業する前後で、主治医・訪問看護・相談支援専門員・事業所がどう引き継ぐかを、個別支援計画やサービス等利用計画に書いておくことが、この条文の趣旨に沿った実務になります。

個別避難計画を確かめる。 14条1項4号・5号で、センターが個別避難計画の作成に協力し、災害時に情報提供を行うことになりました。ご家族は、自分の市町村で個別避難計画が作られているか、人工呼吸器の電源や避難先の医療体制が書かれているかを確認しておくと、センターに相談するときの出発点になります。

この記事の時点について。改正法は公布済みですが、施行は2027年4月1日で、いまの実務は現行法で動いています。政令で定める市(中核市)は10月23日に決まりましたが、基本指針の改正告示は、意見募集時の予定では10月下旬とされています。10月26日時点で官報(10月13日〜26日)と e-Gov の意見募集の結果欄を確かめましたが、告示は確認できませんでした。報酬・基準への反映は令和9年度報酬改定の議論の中にあり、決まったことはありません。施行までに、こども家庭庁・厚生労働省からの運用通知が出ることが見込まれますが、その内容はまだ分かりません。

nestでは、「親なき後」ページで、障害のある方の住まいとお金の備えについての情報をまとめています。重症心身障害のある方の親なき後の住まいは、この改正法11条の4が国と自治体の仕事として明記したところでもあります。施行が近づいた段階で、基本指針と運用通知の内容をあらためてこのコーナーで取り上げる予定です。


出典

※ 条文はこども家庭庁公表の新旧対照表と衆議院の法律案本文によるもので、読みやすさのため一部を省略しています(省略箇所は「…」で示しました)。新旧対照表は法律案の段階のものですが、法律案は衆参両院とも修正なく可決されています。参議院が掲載している提出法律案と成立した法律(令和8年法律第77号)の本文が同じであることも確かめました。個別の事案の判断にあたっては原典をご確認ください。

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