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AIが“書類ごと”作ってくれる ― 納品型と同席型、2つの事務机

AIに会議資料の下書きやお知らせの文面をお願いして、良い答えが返ってきた。——さて、そのあと何をしていますか?

答えをコピーして、Wordに貼り付けて、見出しを付け直して、フォントを整えて、表がずれていたら組み直して……。AIが3分で書いた文章のために、人間が20分かけて“書類のかたち”に整える。 この逆転現象、心当たりのある方は多いはずです。

今回はこの「最後のひと手間」を卒業する話。実は、いまのAIは文章だけでなく、Word・Excel・PowerPoint・PDFといったファイルそのものを作れるようになっています。

連載の番外編・第3弾です

この記事は、連載AIに道具を持たせる(全5回)の番外編です。第2回で「AIに持たせる3つの手」をご紹介しましたが、今回はいわば4本目——“作る手”。書類を作る道具の話です。この記事だけでも読めるように書いています。

事務机には、2つの流儀がある

面白いのは、この「AIに書類を作ってもらう」やり方に、2つの流儀があることです。人にたとえるなら——

  • 納品型 —— 別室に腕のいい事務スタッフがいて、お願いすると完成したファイルを机に届けてくれるタイプ。届いたファイルは、WordでもExcelでも、いつものソフトで開いて使えます。
  • 同席型 —— いつも使っている書類ソフトの隣の席にAIが座っていて、書きかけの書類をその場で「続きを書いて」「表にして」と手伝ってくれるタイプ。
2つの流儀の対比図。左は納品型:チャットでお願いすると完成したWord・Excel・PDFファイルが机に届く。右は同席型:GoogleドキュメントなどのソフトのなかにAIが同席していて、書きかけの書類をその場で手伝う
▲ ファイルで届けてもらうか、隣に座ってもらうか。どちらも立派な“事務机”です

どちらが偉い、という話ではありません。代表選手を1人ずつ見てみましょう。**納品型の代表がClaude、同席型の代表がGemini(Google Workspace)**です。

納品型 ― Claudeは“ファイルを届けてくれる”

Claudeにはファイル作成という機能があり、チャットでお願いするだけで、Word(.docx)・Excel(.xlsx)・PowerPoint(.pptx)・PDFのファイルを作って、ダウンロードできる形で手渡してくれます。

たとえば、こんなお願いです。

🙂
わたし

来月の日中活動の予定を保護者向けのお知らせにして、Word文書で。文字は大きめ、専門用語なしで。予定表はこのメモの通り(……)

🤖
Claude

お知らせ文と予定表を1枚にまとめたWord文書を作りました。こちらからダウンロードできます。日付や持ち物の欄は、開いてそのまま書き換えられますよ。

チャットの返事の中にファイルのダウンロードボタンが現れる——これが納品型の風景です。届いたファイルは普通のWord文書なので、開いて直したり、印刷したり、いつも通りに扱えます。当番表や集計表なら「Excelで、合計の計算式も入れて」というお願いもできます。

そして、ここで前回の記事が効いてきます。前回ご紹介したAnthropic公式のスキル集の中心メンバーが、まさに「きれいなWord・Excel・PowerPoint・PDFを作るための手順書」でした。つまりClaudeの納品物の裏では、あのレシピカードたちが働いているわけです(→ AIに“技”を覚えてもらう ― スキルという名のレシピカード)。

使えるようにするには

Claudeの設定画面で「ファイル作成」の機能をオンにしておく必要があります(名称や提供条件はプランや時期で変わることがあります。2026年7月時点)。場所が分からなければ、例によってClaude本人に「ファイル作成機能をオンにするにはどうすればいい?」と聞くのが早道です。

豆知識:実はClaudeにも“同席型”があります

2026年に入って、WordやExcelの中にClaudeを住まわせるアドイン「Claude for Microsoft 365」も登場しています(有料プラン向け)。Microsoft Officeを使っている事業所なら、納品型と同席型のいいとこ取りも視野に入ります。

同席型 ― Geminiは“いつものソフトの隣の席”に

一方のGoogle陣営は、発想が逆です。ファイルを届けるのではなく、GoogleドキュメントやスプレッドシートといったソフトのなかにGeminiを最初から座らせておく——同席型です。

対象のプランなら、パソコンでGoogleドキュメントやスプレッドシートを開くと、右上に「Geminiに相談」のアイコンがあります。押すと画面右側にサイドパネルが開いて、いま開いているその書類を見ながら手伝ってくれます。

  • ドキュメントで —— 「この下書きの続きを、保護者向けの柔らかい文体で」「この文章を要点3つに整理して」
  • スプレッドシートで —— 「この出席データ、曜日ごとの傾向をまとめて」「月別のグラフを作って」。分析結果をそのままGoogleドキュメントに書き出すこともできます

同席型のうれしさは、ファイルの受け渡しという概念自体が消えることです。書類はずっとGoogleドライブの中にあって、AIがその場で手を入れる。共有もいつものドライブの共有そのまま。すでにGoogle Workspaceで仕事が回っている事業所なら、新しいアプリを1つも入れずに今日から始められます。

使えるようにするには(ここが少し複雑)

Geminiのサイドパネルが使えるのは、Google Workspace の Business Standard 以上のプラン(対象プランなら追加料金なし・標準でオン)か、個人ならGoogle AI Plus / Pro / Ultraのサブスクリプションです。注意点が2つ——①Business Starterプランはドキュメント等のサイドパネル対象外(GmailのGeminiは使えるのに、です)、②スマホアプリのドキュメント/スプレッドシートでは使えず、パソコンでの利用が前提。いずれも2026年7月時点の状況で、変わることがあります。

で、うちはどちらから試せばいい?

見取り図はシンプルです。

どちらから試すかの見取り図。事業所がGoogle Workspace(Business Standard以上)を使っているなら、まずGeminiの同席型(追加インストール不要)。Officeソフト中心・環境がバラバラ・提出用ファイルが欲しいなら、Claudeの納品型。両方できる環境なら用途で使い分け
▲ 判断の入口は「事業所の書類が、いまどこにあるか」
  • 事業所の書類がGoogleドライブ中心なら → まずGeminiの同席型。対象プランなら追加コストも追加インストールもゼロで、明日の朝いちばんに試せます。
  • WordやExcelのファイルでやり取りする文化なら(行政への提出、FAXやメール添付が多い等) → Claudeの納品型。「そのまま提出できるファイル」が出てくる強みが活きます。
  • 迷ったら → 両方とも無料で試せる入口があります。同じお願い(例:「行事のお知らせ1枚」)を両方に出して、仕上がりと手数を比べてみるのが一番早い。連載第1回でやった「同じ質問を投げてみる」の書類版です。

ちなみに、ChatGPT陣営は?

フェアに言うと、ChatGPT側も両方の流儀を揃えつつあります。ChatGPT本体はエージェント機能でPowerPointなどの**ファイル生成(納品型)ができますし、ExcelやPowerPointの中に住み込むアドイン(同席型)**も提供されています(アドイン系は2026年7月から本格的に有料化が始まりました)。さらにその先には、パソコンの操作ごと任せられる本格派エージェント「Codex」も控えています——ここまで来ると福祉現場にはやや大掛かりですが、「AIが書類仕事を丸ごと引き受ける」方向に各社が向かっているのは間違いありません。

豆知識:中身は意外と繋がっている

MicrosoftのCopilotにも「Word・Excel・PowerPointエージェント」というファイル作成機能がありますが、その頭脳としてClaudeを作っているAnthropic社のAIモデルが採用されています(2026年)。入り口の見た目は各社各様でも、舞台裏では技術が行き来している——そんな時代です。

気をつけたいこと

便利さの分だけ、確認の作法もセットで。

🤖

お願いが3つあります。①中身の確認は必ず人間の仕事——私たちが作る書類は、あくまで「よくできた下書き」。日付・名前・金額は、印刷や送信の前に必ず目で確かめてください。②個人情報の扱いは事業所のルールが最優先——利用者さんの情報を含む書類をAIに渡す前に、必ず管理者へ確認を。③体裁の完璧さは求めすぎない——複雑なレイアウトは、最後の微調整を人間がやるほうが早いこともよくあります。「8割まで作ってもらい、2割を人間が仕上げる」くらいの分担が、いまはちょうどいいですよ。

むすびに ― “清書係”からの卒業

思えば、AIの答えをコピペして整形し直していたころ、私たちはAIの清書係をしていたのかもしれません。書類そのものを作れるようになったAIとの新しい分担は、こうです——中身の判断と最終確認は人間、かたちに整えるのはAI

まずは1枚、来週使う予定のお知らせや当番表で試してみてください。「AIの文章をWordに貼り直す時間」が消える感覚は、一度味わうと戻れません。

連載のほうもあわせてどうぞ:AIの“手足”になる道具 ― MCPってなに?(連載第2回)

「こんなこと、パソコンやAIでできる?」というギモンがあれば、お問い合わせフォームからぜひ教えてください。次の「教えてAIさん」で取り上げるかもしれません。

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