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AIの“手足”になる道具 ― MCPってなに?

前回の記事(同じ質問をしたら、ぜんぜん違う答えが返ってきた)では、まったく同じ質問に対して、素のGeminiは「ご自身で検索する手順」を、道具と台帳を持たせたClaudeは「自分でデータを取ってくる工程表」を返してきた——という対比をご紹介しました。

差の正体は、AIの頭の良さではなく、持ち物。では、その持ち物の1つめ、道具とは具体的に何なのでしょうか。今回はその話です。

AIは“電話口の、物知りな相談員”

素のAIを、たとえるなら——電話の向こうにいる、ものすごく物知りな相談員です。

制度のことも、パソコンの操作も、たいていのことは知っていて、聞けば何でも丁寧に教えてくれます。でも、電話の向こうにいるので、こちらの世界に手も足も出せません。あなたのパソコンの中のファイルは見えないし、WAM NETに代わりにアクセスして調べてくることもできない。だからどんなに親切でも、最後は「こういう手順で、ご自身で調べてくださいね」としか言えないのです。

第1回のGeminiの答えが、まさにこれでした。できないことをできないと言い、人間がやるための手順を丁寧に案内する——電話口の相談員としては満点の対応です。

🙂
わたし

AIってあんなに物知りなのに、どうして「ご自身で検索してください」になっちゃうの?

🤖

知識はあっても、手足がないからです。電話口からアドバイスはできても、代わりに手を動かすことができないんですよ。逆に言うと——手足さえ持たせてもらえれば、「私がやっておきますね」と言えるようになります。

素のAI(知識はあるのに手が出せない、電話口の相談員のような存在)と、MCPで“手足”=道具をつないだAIの対比図。道具をつないだAIは自分で情報を取りに行ける相棒になる
▲ 素のAIは“電話口の相談員”。道具をつなぐと“一緒に動く相棒”に

その“手足”のつなぎ方に、名前がついています ― MCP

AIに手足を持たせる——そのための共通のつなぎ方(規格)に名前がついています。それが MCP です。

用語メモ:MCP

MCP(Model Context Protocol/モデル・コンテキスト・プロトコル)。むずかしそうな名前ですが、イメージは家電のコンセントです。コンセントの形が全国共通だから、どのメーカーの家電でも同じ差し込み口で使えますよね。MCPはそれのAI版——「AIに道具を差し込むときの、共通の差し込み口」だと思ってください。この規格に合った道具なら、AIに次々と持たせることができます。

大事なのは、規格の細かい仕組みではなく、AIには、あとから道具を差し込めるという事実です。差し込んだ瞬間から、AIは「話すだけの存在」から「手を動かせる存在」に変わります。

AIに持たせられる、3つの“手”

では、どんな道具(手)があるのか。ざっくり3種類に分けると見通しがよくなります。

AIに持たせる3つの“手”の図。①外から取ってくる手(Webやオープンデータからの取得)、②手元のファイルを扱う手(ExcelやPDFの読み書き)、③台帳を出し入れする手(貯めてきた情報の照会)
▲ 道具はざっくり3種類。「外から取る」「手元を扱う」「台帳を出し入れする」
  1. 外から情報を取ってくる手 —— Webページを見に行ったり、国や公的機関が公開しているデータを取ってきたりする手。
  2. 手元のファイルを扱う手 —— パソコンの中のExcelやPDFを読んだり、書き換えたり、新しく作ったりする手。
  3. 貯めた情報を出し入れする手 —— これまでに貯めてきた記録(台帳・データベース)から、必要なものを探して取り出す手。

第1回のClaudeの答えを思い出してください。「地域×サービス種別の一覧なら、ほぼ即座に可能です」——あの回答の裏側では、①の手でWAM NETの公開データを取ってきて、③の手で自分の台帳と突き合わせる段取りが組まれていました。3つの手が組み合わさって、初めてあの答えになるのです(その現場は次回じっくり見ます)。

身近な第一歩 ― まずは“手元のファイルを扱う手”から

「うちの現場には縁遠い話かも」と思われたかもしれません。でも、実はいちばん身近な道具は、もう手の届くところにあります

たとえばパソコン版のClaudeやGeminiには、パソコンの中のフォルダや、ふだんお使いのサービス(Google ドライブなど)をAIにつなぐ公式の仕組みが用意されています。設定画面から対象を選んで許可するだけ——これも立派な「道具を持たせる」の第一歩です。

つないだフォルダに会議録のファイルを入れておいて、「今月の会議録、決まったことだけ箇条書きにして」とお願いする。コピー&貼り付けの往復なしで、AIが自分でファイルを開いて読んでくれます。「電話口の相談員」が、初めてこちらの机の上を見てくれる瞬間です。

🤖

設定の場所や名称はアプリの更新で変わることがあるので、迷ったらAI本人に「あなたにフォルダをつなぐには、どう設定すればいい?」と聞いてみてください。自分のことなので、ちゃんと案内できますよ。ひとつだけお願い——利用者さんの個人情報が入ったフォルダは、つなぐ前に事業所のルールを必ず確認してくださいね。

なお、①の「外から情報を取ってくる手」にも、拡張機能ひとつで試せる身近な入口があります。番外編としてご紹介していますので、あわせてどうぞ:ブラウザにAIが“住み込み”で働く ― Claude in Chrome をはじめよう

ただし、道具だけでは“あの答え”にならない

ここまでで、「道具=AIの手足」「MCP=その差し込み口」というところまで来ました。

でも、正直に言うと——道具を持たせただけでは、第1回のClaudeのような答えは返ってきません。あの答えのすごみは、道具そのものではなく、複数の道具が段取りよく連携して働いていたこと、そして「どこに何があるか・何が取れないか」を知ったうえで段取りが組まれていたことにあります。

次回は、その現場に踏み込みます。WAM NETから「行動障害に対応できるグループホームの一覧表」ができるまで——道具たちが連携して働く工程表を、1つずつ解剖します。

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