録るだけですか? それは、もったいない。
この記事は、特集「撮るだけじゃ、もったいない ― 旅の記録を作ってみよう」(全3回)の第2回です。放り込むのはあなた、仕分けるのはAIさん。
- 撮るだけですか? それは、もったいない ― なんでも箱をつくる
- 録音も、切符も、一行も、放り込む ― 旅の三日間が地図になる(この記事)
- 旅行記を、AIさんに書いてもらう ― 箱の中身が、一冊になる
- 番外編:スマホは、放り込むだけ ― なんでも箱を、スマホとパソコンでつなぐ
港町「潮見町」と旅人は架空です。写真は人の写っていない図形だけの仮の絵。AIの返事は2026年9月9日に実際にAI(Claude)が返した文を、そのまま載せています(末尾の機械用の印1行だけ省きました)。実演の道具立ては第1回と同じで、作法の紙「仕分け係」と箱を渡した Claude に、パソコン上でフォルダを読み書きする手を持たせています。
旅の記録は、帰ってから書こうとすると書けない
前回、架空の旅人が潮見町に日帰りで行き、写真3枚を箱に放り込みました。今回は同じ旅人が、同じ町に三日間の旅に出ます。
旅の記録が続かない理由は、はっきりしています。帰ってから書こうとするからです。帰った日は荷物をほどいて洗濯をして、翌日は仕事。三日目にはもう、二日目の朝に何を食べたか怪しい。
だから、道中は放り込むだけにします。書かない。整えない。帰ってから、まとめて仕分け係に頼む。
三日間で、箱に入れたもの
旅人が raw に入れたのは、ノート3枚です。一日目は、切符の写真と、電車の中でスマホに向かって話した声。
![[IMG_0502.jpg]]
切符。潮見町まで、乗り換え一回。
(道中の録音)
えーと、今、乗り換えの駅。二番ホームの立ち食いそばを食べた。かき揚げがでかくて、汁がしみてて、うん、これはあたり。次の電車まで二十分あるから、ホームのベンチで、これ録ってる。今日から三日、潮見町。先月は日帰りだったから、今度はゆっくり。浜食堂にもう一度行くのが、まあ、一番の目的かな。あじフライ。今朝のだよって言われたやつ。あれをもう一回。あと、朝市があるって聞いたから、二日目の朝は早起きして行ってみる。灯台は、天気が良ければ夕方にもう一回。前は風が強すぎて、帽子を押さえるので精一杯だったから。えーと、宿は港のそば。窓から船が見えるといいんだけど。あ、電車来た。じゃあ、また。
「えーと」も「うん」も、そのままです。話した声をスマホが文字にしたものを、貼っただけ。二日目と三日目は写真とコメントだけです。
![[IMG_0510.jpg]]
浜食堂の看板。去年の台風で曲がったままだって。
![[IMG_0513.jpg]]
朝市。六時に行ったら、もう半分終わっていた。
![[IMG_0517.jpg]]
浜食堂のレシート。あじフライ定食と、いか焼きを追加。
![[IMG_0525.jpg]]
港。朝の船が出ていくのを見てから、帰る。
録音は文字にしてから箱に入れます。いちばん手軽なのは、スマホのキーボードのマイク(音声入力)で、Obsidian のノートに向かって話すこと。話した端から文字になります。ボイスメモを文字にする機能があるスマホなら、録音してから文字にしても構いません。音声ファイルそのものを箱に入れても、仕分け係は聞けません。
スマホで放り込んで、パソコンの仕分け係に見せるには、両方から同じ保管庫が見える必要があります。Obsidian Sync(有料)のほか、iPhone なら iCloud Drive、Android ではサードパーティの同期アプリが使えます(Obsidian の公式ヘルプ「Sync your notes across devices」に一覧があります)。同期の設定は環境ごとに違うので、番外編「スマホは、放り込むだけ」で、Android+Mac と iPhone+Mac に分けて手順にしました。
帰ってからの一週間は、一行だけ
旅から帰った次の日から、寝る前に一行だけ raw に打ちました。
- 9月1日 ― 洗濯を三回まわした。旅の荷物は、まだ半分。
- 9月2日 ― 浜食堂の魚を思い出した。
- 9月3日 ― 今日は何もなかった。
- 9月4日 ― 次は朝市の早い時間に行きたい。
- 9月5日 ― 切符の半券が、財布から出てきた。
- 9月6日 ― 灯台の写真を、机の横に貼った。
- 9月7日 ― 雨。次の旅は、いつにしよう。
「今日は何もなかった」も、立派な一行です。書くことがない日ほど、書かないと続かなくなります。
仕分けて
日曜日の夜、パソコンを開いて、前回と同じ一言です。
AIの返事・そのまま
作ったノート:日々/2026-08-29 切符.md、日々/2026-08-29 道中の録音.md、日々/2026-08-30 浜食堂の看板.md、日々/2026-08-30 朝市.md、日々/2026-08-30 浜食堂のレシート.md、日々/2026-08-31 帰る日の港.md、日々/2026-09-01 洗濯を三回.md、日々/2026-09-02 浜食堂の魚.md、日々/2026-09-03 何もなかった.md、日々/2026-09-04 次は朝市の早い時間に.md、日々/2026-09-05 切符の半券.md、日々/2026-09-06 灯台の写真.md、日々/2026-09-07 雨.md(13枚。raw の中身は動かしていません)
つないだページ:[[潮見町]]、[[浜食堂]]、[[岬の灯台]]
新しく立てたページ:なし
聞きたいこと:「朝市」が3回(8/29の録音、8/30の写真、9/4の一行)出ています。前回の「港」と同じく一般の言葉として扱い、ページは立てていません。ページにしますか。
放り込んだのは、写真5枚と録音1本と一行7本。仕分け係は13枚のノートを作り、ぜんぶを先月からある3つのページ(潮見町・浜食堂・岬の灯台)につなぎました。新しいページは立てていません。
録音は、こう変わった
録音のノートだけ、raw と少し違います。「えーと」「うん」「あ、」が消えて、四つの段落に分かれています。
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date: 2026-08-29
kind: 録音
about: ["[[浜食堂]]", "[[岬の灯台]]"]
place: ["[[潮見町]]"]
source: raw/2026-08-29 潮見町へ.md
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今、乗り換えの駅。二番ホームの立ち食いそばを食べた。かき揚げがでかくて、汁がしみてて、これはあたり。次の電車まで二十分あるから、ホームのベンチで、これ録ってる。
今日から三日、[[潮見町]]。先月は日帰りだったから、今度はゆっくり。[[浜食堂]]にもう一度行くのが、まあ、一番の目的かな。あじフライ。今朝のだよって言われたやつ。あれをもう一回。
あと、朝市があるって聞いたから、二日目の朝は早起きして行ってみる。灯台は、天気が良ければ夕方にもう一回。前は風が強すぎて、帽子を押さえるので精一杯だったから。
宿は港のそば。窓から船が見えるといいんだけど。電車来た。じゃあ、また。
作法の紙にある「録音の記録」の型には、こう書いてあります。言いよどみ・重複は消してよい。言葉は足さない。 消えた文字を raw と突き合わせると「えーと、」「、うん」「えーと、」「あ、」の四つだけで、足された文字はありませんでした。この特集で「本人の言葉」と言うときは、この仕分け後の文面を指します。写真のコメントと一行は、打ったとおり。録音だけ、言いよどみを落とした版です。
地図になった
グラフ表示を開きます。
見てほしいところが三つあります。
- 浜食堂のページに、先月と今回が集まっている。 先月のあじフライ定食の写真、今回の看板とレシートの写真、道中の録音(「浜食堂にもう一度」)。別々の日に放り込んだものが、同じ店のページに糸で結ばれています。次に潮見町へ行くとき、浜食堂のページを開けば、前回の自分が何を食べて何を言ったかが並んでいます。
- 帰ってからの一行も、つながっている。 「浜食堂の魚を思い出した」は浜食堂へ、「灯台の写真を、机の横に貼った」は岬の灯台へ。旅が終わっても、糸は伸び続けます。
- 糸のない一行が、端に浮いている。 「洗濯を三回」「今日は何もなかった」「雨」。つながる相手がないものは、無理につなぎません。そのまま置かれます。
仕分け係が「朝市」のページを立てなかったのも、同じ理由です。三回出てきた言葉なのに、ページにしていない。作法の紙に「迷ったら、仕分けせず聞く」とあるからです。ページにしたければ、一言返せば済みます。「朝市はページにして、つないで」。
日曜日に、「今週どうだった?」
もう一つ、試しました。仕分けが終わった日曜日に、こう聞きます。
AIの返事・そのまま
今週(9月1日〜7日)のノートは7枚、どれも一行の記録ですね。糸がつながったのは [[浜食堂]](9/2)と [[岬の灯台]](9/6)の二か所で、どちらも潮見町のページに行き着きます。
三つ、聞かせてください。
1. 「次は朝市の早い時間に行きたい」(9/4)と「次の旅は、いつにしよう」(9/7)。「次」が二回出ています。次も潮見町ですか、それとも別の場所を考えていますか。
2. 浜食堂の魚(9/2)、切符の半券(9/5)、灯台の写真(9/6)。旅から帰って一週間たっても、潮見町のものが日々に出てきますね。机の横に貼った灯台の写真は、8月10日のものですか、8月29日からの三日間のものですか。
3. 「今日は何もなかった」(9/3)も、そのまま一枚のノートになっています。こういう日の一行は、このまま残していきますか。
要約ではありません。「充実した一週間でしたね」とも言いません。作法の紙に、要約や助言ではなく、質問を三つ。評価しない。ほめない、と書いてあるからです。
聞かれて初めて気づくことがあります。一週間の一行に「次」が二回出ていたこと。旅から帰っても、潮見町のものが日々に混ざり続けていたこと。答えを一行書き足せば、それがまた箱に入ります。「次の旅の候補」は、こうやって育ちます。
線引き
- 旅先の写真には、同行者や、たまたま写った人が入りがちです。箱に入れる前に一度考えてください(個人情報の線引き)。実演の写真は、人の写っていない図形だけです。
- レシートには、金額や店名が印字されています。家計の記録として残したい人には材料になりますが、箱の中身を人に見せる予定があるなら、レシートは撮らない、という線もあります。
- 録音には、同行者の名前や、店の人の話が入ることがあります。仕分け係は「人のページは本人と、本人が名前で呼んだ家族・友人だけ」という決まりで動くので、店の人や通りすがりの人のページは立てません。それでも、録音そのものは raw に残ります。残したくない部分は、文字にした段階で消してから放り込んでください。
今日のカード
次回は、箱の中身から旅行記が出てきます
先月の日帰りと、三日間の旅と、帰ってからの一週間。箱の中は、写真8枚と録音1本とコメント12本になりました。次回、この箱に向かって一言だけ頼みます。「旅行記を書いて」。旅人の言葉は一字も変えずに、AIさんが章立てを組み、写真を選び、一冊にします。放り込んだだけの箱から、本が出てきます。
→ 第3回「旅行記を、AIさんに書いてもらう ― 箱の中身が、一冊になる」(近日公開)