スマホで写真を撮るだけですか? それは、もったいない。
この記事は、特集「撮るだけじゃ、もったいない ― 旅の記録を作ってみよう」(全3回)の第1回です。放り込むのはあなた、仕分けるのはAIさん。道具はスマホと、自分のノート(Obsidian)と、AIさんの三つだけ。
- 撮るだけですか? それは、もったいない ― なんでも箱をつくる(この記事)
- 録音も、切符も、一行も、放り込む ― 旅の三日間が地図になる
- 旅行記を、AIさんに書いてもらう ― 箱の中身が、一冊になる
- 番外編:スマホは、放り込むだけ ― なんでも箱を、スマホとパソコンでつなぐ
出てくる港町「潮見町」と、そこへ行った旅人は架空です。写真も、人の写っていない図形だけの仮の絵です。一方、AIの返事は2026年9月8日に実際にAI(Claude)が返した文を、そのまま載せています(末尾についていた機械用の印1行だけ省きました)。仕分けの結果として作られたノートも、AIが書いたままです。実演は、この記事と同じ作法の紙と同じ箱を渡した Claude に、パソコン上でフォルダを読み書きする手を持たせて行いました。Claude Desktop に Filesystem で Obsidian の保管庫を見せる道具立て(特集「道具の入手」)と同じ働きです。
撮っただけの写真は、憶えていない写真
スマホの写真、いま何枚ありますか。数百枚なら少ないほうで、何千枚という方も珍しくありません。
その中から「先月、日帰りで行った港町の、灯台の写真」を出せますか。日付をたどれば、たぶん出ます。でも、そのとき食べた定食の名前、おかみさんが言った一言、帰りの船を見た時間——写真には写っていません。撮った瞬間には憶えていたことが、写真だけ残って、言葉のほうが消えていく。撮っただけの写真は、憶えていない写真です。
だからといって「記録をつけよう」と決心すると、たいてい三日で終わります。書こうとするからです。
この特集で提案するのは、書かないやり方です。撮ったもの、録ったもの、打ったコメントを、ぜんぶ一つの箱に放り込むだけ。分類しない。名前も付けない。仕分けは、AIさんに任せます。
仕組みは、三つだけ
| 役 | 誰 | すること |
|---|---|---|
| 放り込む人 | あなた(スマホ) | 撮る・録る・コメントを打つ。それを「なんでも箱」に入れる。分類も名前付けもしない |
| 仕分け係 | AIさん | 箱の新入りを見て、決まった型のノートを作り、関係のあるもの同士を糸でつなぐ |
| 憶えている人 | ノート(Obsidian) | 中身はただの文字ファイル。データは自分の手元。糸のつながりが「地図」として見える |
「なんでも箱」の正体は、Obsidian の保管庫の中に作る raw という名前のフォルダです。raw は「生のまま」という意味。ここに入れたものは、AIも含めて誰も書き換えません。
Obsidian は無料のノートアプリで、スマホ版もあります。入手のしかたは特集「道具の入手」の第3回に書きました。AIに箱の中を見てもらうには、パソコン版の Claude Desktop(第1回)と、フォルダを読み書きする手 Filesystem(第2回)が要ります。スマホだけで試す軽い版は、この記事の後半に。
箱をつくる ― 三手
- Obsidian で保管庫を一つ作り、名前を「記録」にします。中に raw というフォルダを一つ作ります。これが、なんでも箱です。
- スマホの Obsidian の設定で、「ファイルとリンク → 新規添付ファイルの保存先」を「下で指定したフォルダ」にして、
rawを指定します。こうしておくと、ノートに写真を貼るだけで、写真そのものも箱に入ります。 - 放り込む。 raw の中に新しいノートを作り、写真を貼って、コメントを打つ。それだけです。ノートの名前は、その日の日付にしておくと後で楽です(例:
2026-08-10 潮見町)。
決めることは、ここまでで全部です。「どのフォルダに入れるか」「ファイル名をどうするか」は、考えません。
放り込んでみる ― 架空の日帰り、写真3枚
架空の旅人が、架空の港町・潮見町に日帰りで行きました。撮った写真は3枚。帰りの電車で、raw の中にノートを一枚作り、写真を貼って、コメントを一つずつ打ちました。
![[IMG_0412.jpg]]
岬の灯台。風が強くて帽子が飛びそうだった。
![[IMG_0418.jpg]]
浜食堂のあじフライ定食。おかみさんが「今朝のだよ」と言った。
![[IMG_0431.jpg]]
帰りの港。夕方の船が戻ってきた。
![[IMG_0412.jpg]] は、Obsidian で写真を貼ったときに勝手に入る印です。旅人が打ったのは、コメントのほうだけ。三行です。
仕分け係を頼む
ここからがAIさんの仕事です。ただし、いきなり「仕分けて」と言っても、AIは何をどう仕分ければいいか知りません。そこで、仕分けの作法を書いた紙を先に渡します。
仕分け係(shiwake-gakari)v1.1 ― zip形式
中身は、仕分けの作法を書いた説明文と、ノートの型(テンプレート)3枚、それに説明書と利用条件です。プログラムではないので、開けば人間にも普通に読めます。自由に使い、直し、配っていただいてかまいません(クレジット表示のみお願いする条件で公開しています。詳しくは同梱の LICENSE を)。
渡し方は、倉庫番のときと同じです。AI本人に聞くのがいちばん確実です。
セットできたら、最初に一度だけ「箱の準備をして」。AIが「日々」「ページ」というフォルダを用意し、型のノートを置き、「放り込むのはあなた、仕分けるのは私。raw の中身は読むだけで、動かしも消しもしません」と宣言します。
そして、放り込んだあとに、この一言です。
AIの返事・そのまま
raw の新入りは 1 件(raw/2026-08-10 潮見町.md、写真3枚つき)でした。写真1枚につき1ノートで仕分けました。
日々/ と ページ/ がまだ無かったので、今回つくりました。raw の中身は読んだだけで、動かしていません。
作ったノート:日々/2026-08-10 岬の灯台.md、日々/2026-08-10 浜食堂のあじフライ定食.md、日々/2026-08-10 帰りの港.md
つないだページ:[[潮見町]]、[[岬の灯台]]、[[浜食堂]]
新しく立てたページ:ページ/潮見町.md、ページ/岬の灯台.md、ページ/浜食堂.md
聞きたいこと:「帰りの港」の港は、名前が分からなかったのでページを立てていません。港に名前があれば教えてください(なければこのままにします)。「おかみさん」は店の人なので、ページは作っていません。
一言で頼んで、返事はこの4行です。作ったノート、つないだページ、新しく立てたページ、聞きたいこと。作法の紙に「報告は4行で」と書いてあるからです。
できたものを、見てみる
「日々」フォルダに、ノートが3枚できています。一枚開くと、こうなっています。
---
date: 2026-08-10
kind: 写真
about: ["[[岬の灯台]]"]
place: ["[[潮見町]]"]
source: raw/2026-08-10 潮見町.md
---
![[raw/IMG_0412.jpg]]
[[岬の灯台]]。風が強くて帽子が飛びそうだった。
上の5行は「型」です。日付、種類、関係するもの、場所、出どころ。旅人はこの5行を一文字も書いていません。AIが型に流し込みました。
(この実演は仕分け係 v1.0 のものです。配布している v1.1 では、出どころの行が source: "[[raw/2026-08-10 潮見町]]" の形になり、箱の中の元のノートからも糸が伸びます。グラフ表示で「放り込んだものが消えていない」ことまで見えるようになりました。)
本文のコメントは、旅人が打ったとおりです。変わったのは「岬の灯台」が [[ ]] で囲まれたことだけ。この二重かっこが、Obsidian の糸です。囲まれた言葉は、同じ名前のページへの道になります。
その行き先の「ページ」フォルダには、3枚のページが立っています。
- 潮見町 ― 岬の灯台・浜食堂・港のある町。初出:2026-08-10
- 岬の灯台 ― 潮見町の岬に立つ灯台。初出:2026-08-10
- 浜食堂 ― 潮見町の食堂。あじフライ定食。初出:2026-08-10
どれも一行だけ。AIが知っていることを書き足したのではなく、旅人のコメントに出てきた言葉だけで組んであります。「初出」の日付は、この言葉が箱に最初に現れた日です。
そして、Obsidian の左端にある、点が三つつながったアイコン(グラフ表示)を押します。
写真を3枚放り込んで、コメントを一つずつ添えただけ。分類もしていないし、フォルダも作っていない。それなのに、灯台のページと食堂のページができて、3枚の写真がそこに糸でぶら下がっている。これが、この特集の最初の「へー」です。
仕分け係が、守っていること
AIが勝手に気を利かせたわけではありません。渡した作法の紙に、六つの決まりが書いてあります。全部は書きませんが、この記事の返事に出てきたものだけ。
- raw の中身は、動かさない・消さない・書き換えない。 仕分けは解釈で、解釈は間違いうる。間違いに気づいた日、戻る先が箱の中身だから
- コメントは、そのまま。
[[ ]]で囲むことは許しているけれど、言葉そのものは変えない。書き足しもしない - 人のページは、本人と、本人が名前で呼んだ家族・友人だけ。 だから「おかみさん」のページは作らなかった。店の人、通りすがりの人、写真に写り込んだ知らない人のページは立てない
- 迷ったら、仕分けせず聞く。 「帰りの港」の港は名前が分からなかったので、ページを立てずに聞いてきた
「おかみさんのページを作りませんでした」と、聞かれてもいないのに報告してきたのは、この決まりがあるからです。記録の道具は、勝手に人のページを増やさないことのほうが大事です。
ここだけ手がかかります ― パソコン版と、スマホだけの軽い版
ここまでの実演は、パソコン上の Claude に保管庫のフォルダを読み書きする手を持たせて行いました。読者の方には、Claude Desktop に Filesystem で保管庫を見せる形(道具の入手 第1〜2回)が同じ形になります。AIが箱の中を直接見て、ノートを直接書く。糸を自動で張ってくれるのは、この形です。
スマホだけでも、半分はできます。スマホのAIアプリに写真とコメントを渡して、「日付・種類・関係するもの・場所を頭に付けた短いノートにして。コメントは書き換えないで」と頼めば、上と同じ形の文が返ってきます。それを Obsidian に貼れば、ノートは一枚できます。ただし、ページを立てて糸を張るところまでは、AIの手が箱に届いていないのでできません。スマホは放り込む場所、仕分けはパソコン、と分けるのがこの特集の前提です。スマホとパソコンの箱をそろえる方法(同期)は、番外編「スマホは、放り込むだけ」にまとめました。
種明かしを一つ。この実演のAIは、写真そのものを見なくても、コメントだけで仕分けられました。「岬の灯台」も「浜食堂」も、コメントに書いてあったからです。写真の中身をAIが読めるかどうかは道具によって違うので、この特集ではコメントを添えることを前提にします。「風が強かった」程度で十分です。
線引き
- 潮見町の写真に人は写っていません。旅先で他人が写り込んだ写真、同行者の顔が大きく写った写真は、箱に入れる前に一度考えてください。考え方は個人情報の線引きの回に。
- この特集で「本人の言葉」と言うときは、仕分け後のノートに残った文面を指します。写真のコメントと短い一行は、打ったとおりです。録音(第2回)だけは、型の決まりで「えーと」「うん」のような言いよどみを落とすことを許しています。言葉を足すことは、許していません。
今日のカード
次回は、録音と切符と一行を放り込みます
次回、同じ旅人が潮見町に三日間の旅に出ます。電車の中で話した声、切符、レシート、食堂の看板——ぜんぶ箱へ。帰ってからの一週間は、寝る前の一行だけ。仕分け係が「場所」と「店」のページに糸を張っていくと、グラフ表示が旅の地図になります。先月の浜食堂の写真と、今回の浜食堂の写真が同じページに集まり、帰ってからの「浜食堂の魚を思い出した」の一行も、そこにつながります。
→ 第2回「録音も、切符も、一行も、放り込む ― 旅の三日間が地図になる」(近日公開)