行事や旅行のあと、こんな心残りはありませんか。
🙂「写真、いっぱい撮ったのよ。壁に貼る新聞にできたら、みんな喜ぶんだけど……レイアウトを考えて、記事を書いて、って思うと、つい後回しに」
わかります。かべ新聞は、作れば必ず盛り上がるのに、仕込みが大変だから幻の企画になりがちです。今回はその仕込みを、そろえた道具に手伝ってもらいます。役割分担はこうです——編集長は人間、記者はAI。
この記事は、特集「道具箱で、あそぶ ― 道具は、そろった。さあ、あそぼう。」(全2回)の第1回です。道具の入手(Claude 版)とGoogleの道具箱(Google 版)でそろえた道具を、組み合わせて遊びます。題材は鉄道倶楽部の旅。
- かべ新聞編集部 ― 旅の写真が、その日のうちに新聞になる(この記事)
- 思い出ラジオ局 ― 同じ材料が、こんどは番組になる
材料は「写真」と「一言メモ」だけ
まず、Google ドライブに材料を入れる箱を作ります。「ドライブを、AIの“手”にする」の回でやった、あの要領です。
- ドライブに新しいフォルダを作る(今回の名前は「てつどう倶楽部新聞の材料」)
- 旅の写真を入れる(今回は5枚)
- 一言メモをテキストで1本入れる
メモは、きれいな文章でなくてかまいません。今回使ったのは、こんな箇条書きです。
・鹿児島本線で門司港へ。車窓から海が見えたところで歓声があがった
・門司港駅は大正時代の駅舎。写真をたくさん撮った
・潮風号はゆっくり走るトロッコ列車。風が気持ちよかった
・九州鉄道記念館では運転シミュレーターに長い列。順番を守って全員が体験できた
・昼ごはんは名物の焼きカレー。あつあつだった
・関門海峡で記念写真。対岸は下関
・帰りの電車では来月のミーティングで「次の旅」の話をしようと決めた
・ハプニング:帰りにひとり切符が見当たらずヒヤリ。ポケットの奥から出てきて一同ホッ
ポイントがひとつ。メモには 「だれが言ったか・だれが写っているか」を書かないこと。名前がなくても新聞は作れますし、AIに渡す材料から個人情報を抜いておくのは、個人情報の線引きの回でお話しした基本の型です。
編集長、記者に注文を出す
Gemini を開き、チャット欄の**+ボタン → ドライブから追加**で、さっきのフォルダから写真とメモを選んで添付します。そして、編集長らしく注文を出します。
注文の型は「頼み方のコツは、新人さんへの引き継ぎと同じ」でご紹介したとおり。材料はこれ・作るものはこれ・構成はこれ・書き足すな、の4点です。最後の一言「メモに書いていないことは書き足さないで」が、新聞づくりでは特に効きます。
まさかの展開 ― 下書きを頼んだら、紙面ごと出てきた
ここからが、実際にやってみた者の報告です。文章の下書きが返ってくるものと思って待っていたら、Gemini が作ってきたのは——紙面そのものでした。
大見出し「てつどう倶楽部、門司港へ! 歴史と海とカレー満喫の旅」。リードがあり、記事が3本あり、写真には説明文が付き、編集後記には切符のハプニングまで拾ってある。メモの箇条書きが、そのまま新聞の「取材メモ」として機能したわけです。あとは印刷して壁に貼れば、その日のうちに掲示できます。
編集長の出番 ― AIの紙面は、貼る前に検品する
ただし、このまま貼ってはいけません。ここからが編集長の仕事、検品です。実際にこの紙面をよく見ると、3種類の直しどころが見つかりました。
- 文字の乱れ——記事1に「海が見えてんゞを見えて歓声」という日本語になっていない行。Gemini 自身も「焼きカレーの写真は元の画像と少し違う形で生成されています」と申告してきました
- 写真の使い回し——記事2の右の写真が、左とまったく同じトロッコ列車。「関門海峡をバックに記念撮影」の説明文なのに、写っているのは列車です
- 地理の間違い——その関門海峡の写真は下関側から門司港側を見て撮ったもの。なのに説明文は「対岸は下関!」
1は絵の中の文字が苦手という画像生成の性質(自信満々にまちがえる)。2と3は、土地と写真を知っている人間にしか気づけない間違いです。AIは門司港と下関のどちら岸から撮った写真かまでは分かりません。編集長の目は、まだまだ必要なのです。
差し戻し ― 「ここを直して」と注文して、刷り直させる
見つけた間違いは、実際の編集部と同じように差し戻します。
正直に書くと、差し戻しは1回では終わりませんでした。合計3回です。
- 1回目:写真は差し替わり、説明文も「対岸は門司港!」に。ところが、もともと下にあった関門海峡の写真が残って同じ写真が2枚に。しかも新たに「潮門海峡」という誤字が誕生
- 2回目:重複した写真は消えた。でも「潮門海峡」はそのまま
- 3回目:「この1文字だけを直して」と念を押して、ようやく「関門海峡」に
画像の刷り直しは毎回くじ引きのようなもので、指摘した所は直っても、別の場所が変わってしまうことがあります。(おまけに、消した写真の跡には Gemini が門司港の豆知識を勝手に書き足していました——ここも本当は検品対象です。)それでも間違いを指摘すれば、AIは根気よく付き合ってくれます。編集長は赤ペンを持って、直るまで注文すればいい。
まとめると、かべ新聞編集部の型はこうです。
- 掲示用に急ぐ日:紙面画像を印刷し、変な文字の上に正しい文字を書いた紙を貼る(かべ新聞らしい直し方です)
- きちんと仕上げたい日:次の「文章版」から作り直す
手直しできる「文章版」ももらっておく
続けてこう頼みました。
+ボタン → その他のツール → Canvas を選んでから送ると、Canvas が開いて、同じ内容が編集できる文書になって出てきます。見出し・本文・写真の挿入位置・説明文まで整った状態です。右上のメニューから Google ドキュメントにエクスポートすれば、あとはミーティングでみんなで直せます。誤字も、ここでなら安心して直せます。
今回の道具立て
- ドライブ(手):材料置き場。写真とメモを1つのフォルダに——第5回・ドライブの手
- Gemini(記者):材料から紙面と文章を作る。画像の生成は無料アカウントでも回数限定で試せます(2026年8月時点)
- Canvas(机):手直し用の文章版——第1回・Canvas
鉄道倶楽部と、みなさんの現場へ
今回の題材は、nest の鉄道倶楽部——鉄道好きの仲間が毎月のミーティングで旅行計画を立て、年に1回ほど鉄道の旅に出る当事者活動——を思い浮かべた、架空のモデル旅です(写真は下記のフリー素材、メモは創作)。倶楽部の本物の旅でこの新聞づくりが始まったら、またご報告します。
そしてこの手順は、鉄道に限りません。事業所の外出行事、家族旅行、地域のお祭り。写真と一言メモさえあれば、どの現場でも「編集部」を開店できます。掲示のときは、写っている方の同意だけお忘れなく。
次回はこの続き。同じ材料フォルダから、こんどは耳で楽しむ思い出を作ります——思い出ラジオ局へどうぞ。
実演に使った写真は Wikimedia Commons のフリー素材です(門司港駅駅舎: Hide-sp / CC BY-SA 3.0、潮風号: そらみみ / CC BY-SA 4.0、九州鉄道記念館 EF10形: そらみみ / CC BY-SA 4.0、焼きカレー: Hiroshi Ishii / CC BY 2.0、関門海峡と関門橋: Wei-Te Wong / CC BY-SA 2.0)。写真を含む紙面画像も、同じく CC BY-SA の条件で公開しています。
「こんなこと、パソコンやAIでできる?」というギモンがあれば、お問い合わせフォームからぜひ教えてください。次の「教えてAIさん」で取り上げるかもしれません。